町工場の手帖 2026年3月
町工場の手帖

2026年3月のご挨拶
3月。工場の空気が、少しだけ軽くなりました。
佐賀県有田町の小さな町工場で、私たちは今日もエギを削り、塗り、組み上げています。
26年以上続けてきた、いつもの仕事です。その多くが手作業です。ひとつ、ひとつ。
しかしこの1年、いつもの仕事の「隣」で、静かに、しかし確実に、何かが変わり始めています。
■ 毎週のように届く衝撃──「アンソロピックショック」
いま、AI業界では毎週のように世界的なニュースが飛び込んできます。 とりわけ、米国Anthropic社の動きは凄まじい。
新しいモデルが出るたびに、できることの水準が一段上がる。
これまでなら手を付けようとすら思わなかったことが、気づけばもう実現している。
数週間前、Anthropic社がClaude CoworkというAIエージェントを発表すると、SaaS企業の株価が一斉に暴落しました。 報道では、これを「アンソロピックショック」と呼びました。
■ Claude Code という破壊力
その震源地にあるのが、 Claude Code です。
ターミナルから起動し、自然言語で指示を出すだけで、 ファイルを読み、コードを書き、テストを走らせ、修正までを一気通貫で行う。
正直に言って、破壊的に速い。
これまで半日かけていた作業が、数十分で形になる。
「ここをこう直して」と伝えれば、関連ファイルを自分で探し出し、整合性を保ったまま修正してくる。
その変更はすべてgitで記録され、管理される。
Claude Codeの破壊力は、gitという仕組みと組み合わさることで、
これまで考えられなかった生産性の改善をもたらしています。
人手も時間も限られた町工場にとって、 この跳躍は、冗談ではなく事件です。
■ 町工場での実際
私たちの仕事の中心にあるのは、完成した製品そのものよりも、それを支える治具づくりです。
そこにClaude Codeが加わったことで、設計の検討、工程の記録、Webサイトの更新──
「手を動かす前の段取り」と「手を動かした後の記録」が、劇的に変わりました。
■ スマホと隙間時間という革命
もう一つ、実感として大きいのが、 場所を選ばなくなったということです。
歯医者の待合室で順番を待つ時間。買い物の合間にベンチに座った数分間。
そんなちょっとした隙間時間に、スマホからClaude Codeを立ち上げ、コーディングができる。
思いついたアイデアは、その場でコードに落とし、
git commitしておく。
工場に戻ったら、続きから始められる。
かつて「まとまった時間がないとできない」と思い込んでいた作業が、5分、10分の断片に分解できるようになった。
町工場の人間にとって、これは静かな革命です。
■ とりあえず、git branchで試す
試したいアイデアが浮かんだら、とりあえずgit branchを切って試してみる。
うまくいけばマージし、だめならブランチごと捨てればいい。
失敗のコストが限りなく低い。だから、思いつきを恐れずに形にできる。
この気軽さが、町工場の開発を根本から変えています。
■ デジタルの加速と、人の判断
2026年は、毎日が衝撃です。
朝起きてニュースを開けば、昨日の常識がもう書き換わっている。
毎週のようにアンソロピックショックが届き、その波を、ただ眺めるのではなく、町工場の現場に引き込み、手を動かしながら確かめています。
デジタルを十分に活用しながら、最後は人が考え、判断する。
3月という節目の季節に、 その当たり前をあらためて確かめています。
今月もどうぞよろしくお願いいたします。
令和8年3月
株式会社キーストン
代表取締役 金川 信栄