ホッチキスで、スッテは直る。
専用工具は、いらない。
15年ずっと聞かれてきた「破れた布は直せませんか」。専用工具を買わずに、手元の道具だけでできる方法にたどり着きました。
動画解説/この動画を取り上げる理由
キーストンのエヴァンジェリスト久保が、スッテの上布(うわぬの)を張り替える手順を、最初から最後まで通しで見せています。「破れた布は補修できませんか」——15年ほど前から寄せられ続けてきた質問への、ようやくの回答です。
補修そのものは以前から可能でした。ただし専用の工具が要ります。年間に数百個から数千個を張り替える漁業者ならその工具を持つ意味がありますが、一般の釣り人が年に数十個のために揃えるのは見合いません。この動画が紹介しているのは、ハサミ・裁縫針・糸・ライター、そしてホッチキスという、どこにでもある道具だけで完結させる方法です。
取り上げるのは、手順そのものより公開に至った理由のためです。動画の中で久保自身が明かしているとおり、社内には「これはやらない方がいいのではないか」という声もありました。作って売っている会社が、直して使い続ける方法を教えることになるからです。
注目の瞬間
キーストンの分析
この方法の要はホッチキスです。布を巻いたら、縫う前にまず数か所を仮止めします。鉛スッテ20号なら4か所、ビビンスッテ3号なら3か所。とくに針に近い部分とサルカンの付け根はしっかり絞って止めます。打つ位置は縁ぎりぎりではなく、1mmほど内側に余裕を残します。
専用工具が担っていたのは「縫うあいだ、布を正しい位置に保つ」という仕事だと考えられます。ホッチキスはそこだけを肩代わりします。ぎりぎりに打つと針を通すときに干渉するため、1mmの余白はそのための逃げです。
縫製の腕が要るように見えて、実際に難しいのは位置決めのほうです。そこさえ固定できれば、あとはS字に縫っていくだけになります。専用工具なしで成立するのは、この一手があるからです。
仕上げにライターで炎を当てますが、赤い部分ではなく青い部分を使います。赤い炎だと焦げてしまうためで、青い炎を整えたい箇所へゆっくり当て、少しずつ均していきます。連続で当てると熱を持つので、休みながら進めています。
化繊の布端を溶かして留める処理です。赤い炎は温度が低く煤が出るのに対し、青い炎は温度が高く清浄に燃えます。焦げを避けながら溶かすには青い部分が適していると考えられます。
縫い目の粗さは、この工程でかなり吸収できます。動画の中でも「完璧ではないが、補修ならここまで綺麗になれば十分」と言っています。初めての人でも実用水準に届くのは、最後にこの均しがあるからです。
フィールドデータ
- 国
- 日本
- 地域
- 佐賀県
- 製品
- ビビンスッテ
- 釣法
- イカメタル
- アングラー
- 久保
製品の役割
ビビンスッテ
上布の下に綿を巻いた構造です。この綿には、他社のものと比べてばらけにくい、結束力の強いものを使っています。
傷むのは上布が先で、中の綿まで交換する必要はほとんどありません。動画でも綿は外さず、そのまま再利用しています。綿を巻き直すには専用の工具が要るので、ここが自分で直せるかどうかの分かれ目になります。縫うときは下の綿ごと一緒に通すと、結束力がさらに増します。
スッテ布(補修用)
10cm×1200mm。スッテのサイズに合わせて切って使います。赤白・赤青・赤みどり・赤イエロー・ピンク白の5色。
直営店(キーストン ダイレクトショップ)のハンドメイドパーツにあります。要望が多かったため追加したもので、動画でもここから購入できると案内しています。1本で複数個ぶんの長さがあるので、サイズに合わせて切り分けてください。同じ棚に傘針(KS10号・KS06号など)も並んでいます。
KS鉛スッテ
鉛のボディに布を巻いたスッテです。動画では20号のオールブラックを、赤い布へ張り替えています。
布が破れただけで捨てるには、惜しい以上の理由があります。鉛は簡単にゴミ箱へ捨てられる金属ではありません。処分に手間がかかるぶん、直して使い続けられることの価値が大きくなります。
有田の製造現場から
「新しく買っていただきたい、という思いはあります。それと同時に、長く使ってもらいたいという思いもある。長く使っていただくことが、物を作っている会社としては喜びにもなる」——動画の後半で、久保はそう話しています。社内に反対の声がありながらこの方法を公開したのは、そのためです。
綿の結束力も、上布だけを替えれば直るという構造も、作っている側だから言えることです。佐賀県有田町の工場で組み立てているスッテを、1日でも長く使ってもらうための知恵として公開しています。
MADE TODAY IN ARITA
再生できないときは YouTube で見る。